聖(ひじり)は西院御影堂で大師の御前を守っている僧侶です。定員が3名であるため三聖人(さんしょうにん)ともよばれていました。天福元(1233)年に西院経蔵に弘法大師像が安置されたことがきっかけでおかれたといわれています。
御影堂の内陣にある経蔵(西院文庫)には廿一口方、鎮守八幡宮方などさまざまな組織の文書が置かれていますが、それら組織の人が自由に出入りできるわけではなく、聖だけが立ち入ることができました。現代の図書館員が書庫の文書を出納するように、聖が経蔵の文書を出納する役をつとめていました。
この文書は、その三聖人が年貢として納められる若狭国太良荘地頭方供米という米を自分たちに与えて欲しいとアピールした文書です。三聖人は、自分たちが「御文書開閉之重役」によって得分を得てきたことは組織の僧侶みなの認めるところである、と主張しています。また、「御文書開納」の催促に応えて御影堂の経蔵に仕えることが自分たちの職分の第一であるとも述べています。
これは御影堂聖人職に任じられた観一が提出した請文(誓約書)です。御影堂の開閉や文書の出し入れをきちんと行うこと、何ごとも衆命(供僧の指示)に従うことなどを誓い、誓約に背くようなことがあれば職を解かれてもよいと述べています。なお、新たに三聖人になるためには、他の2人の聖から推薦されることが必要でした。